乙女桜〜誠の武士〜
第一章
奪われた日々
バタバタバタ………ガラッ!
「母様!ただいま戻りました!」
勢いよくかけてきた少女は
花のような笑顔を浮かべて襖を開けた。
漆黒の長い髪を高い位置で結んだ少女
━━━━和泉 陽凪 (イズミ ヒナ)
「陽凪、おかえり」
そう言って笑顔をむけるのは、
陽凪が大好きな母だ。
陽凪が母と仲良く談笑していると、
廊下から誰かが駆けてくる音がした。
ダッダッダッダッダッ………ガラッ!
「ひ、陽凪様、
急に駆け出さないで下さいっ!
心配したじゃないですかっ!」
肩で息をしながらやってきたのは、
陽凪の世話係の上川だ。
「上川が遅いからでしょ?」
「すみませんね…上川。
陽凪が手のかかる子で。」
「め、めっそうもございませんっ!
陽凪様のお世話ができて、
とてもうれしいですからっ!」
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