≪子猫のチロ≫
新聞紙の棒は、チロちゃんに振り下ろされる事はなく、おじさんの悲鳴が聞こえてきました
“”
ぶるぶる震えていたチロちゃんが、恐る恐る目を開けてみると、チロちゃんの前に一匹のお兄さん猫が、おじさんとチロちゃんの間に割って入るように立っていました
どうやら、おじさんはこの猫に引っかかれたようで、腕を押さえてうずくまっていました
“チビついてこい”
お兄さん猫はそう言うと、チロちゃんの食べかけのお魚をくわえるて走り出しました
“あっ待ってよぉ~”
チロちゃんはそう叫ぶと、叩かれた痛みも忘れて、お兄さん猫に必死についていきました
夢中で追いかけていくと、見慣れた原っぱにでもした
お兄さん猫は原っぱの土管の中に走り込んでやっと止まってくれました
遅れて駆けて入ってきたチロちゃんが、倒れ込んでハァハァいって呼吸を整えていると、お兄さん猫はくわえていたお魚をぷいっとチロちゃんに放り投げると
“チビ…あんまり無茶するんじゃないぞ
ほらお前のご飯だ”
と優しくチロちゃんを叱り、殴られたところをペロペロ舐めてくれました…
“あ…お母さんと一緒だぁ…”
チロちゃんは心の中でそう思いました
“ありがとう…お兄ちゃん”
チロちゃんがお礼を言うと、お兄さん猫は
あははっ
と、ちょっと照れた表情で笑い
“お兄さんってほど若くなうよ…
俺はファン一週間ぐらい前に住んでた空き地にビルができちゃって、隣町から引っ越してきたんだ”
とチロちゃんに教えました
“私はチロちゃんいつもはお母さんとお散歩なんだけど、今日ははじめて一人できたね…そしたら・・・”
チロちゃんは今日のはじめてのお散歩であった事を、ひとつずつファンに話していきました
ファンはニコニコしながらチロちゃんの話しを聞いていました
チロちゃんは一通りはなし終えたあと、ファンに今度上手な散歩の仕方を教えてもらう約束をして原っぱをあとにしました
空は綺麗な夕焼けです
途中、ボスの前を気をつけて通り抜け、おうちの近くへ…
おうちの前にはお母さん猫が、チロちゃんの遅い帰りを心配そうに待っていました
“お母さ~ん”
チロちゃんは、タタッと走ってお母さん猫に抱きつきました