<Rain>
校門坂を下り横断歩道を渡れば、周りに他の生徒はいなくなった。
私はさしていた傘を閉じて、大雨の中家まで帰る。
ふと、立ち止まって目を閉じれば、あの暖かい手を思い出すことができる。
忘れないように。
……いつでも思い出せるように。
あの日も突然の大雨だったな。
あの日は、私の人生を大きく変えた日。
あの日は、大切な人を失った日。
しばらく目を閉じたままでいると、不意に体にあたる雨が止まった。