<Rain>
2#基準
「ねぇ、暇。」
「………浩太郎?」
夕食を食べ終わり、特にすることもなくぼーっとテレビを見ていたら、頭上から声が聞こえた。
上に見ると、そこには怪訝そうな顔をした従弟の浩太郎が立っていた。
……どうやって入ったんだろう、この人。
「暇。」
「うん。」
「鍵開いてた。」
「うん、ごめん。」
「暇。」
「……トランプする?」
勝手に家にきたというのに、相変わらず不機嫌そうな浩太郎。
「まさか寝起き?」
「もち☆」
そう言ってピースをする浩太郎。
浩太郎は東鷙高校の一年なんだけど、たまに学校に行かないときがある。
それは気分的なものが原因だったりするのだけど。
私と同じように、浩太郎も人との関係とか繋がりにあまり興味を持っていない。
だから、二人とも他人からは冷たく見られる。
……しょうがないことなんだけどね。
「そういえば、この間紡と遊んだ。」
「紡さんと?……仲良いね。」
「まぁね。」
得意気な顔をして私を見る浩太郎は、眠そうに欠伸をした。
ちなみに紡さんは、浩太郎の友達。
紡さんが変わり者の浩太郎に興味を持って話し掛けたのが、二人が仲良くなったきっかけなのだそう。
「紡、まじ優しい!この前も、candyくれたし。」
「……浩太郎の優しいの基準が分からない。」
「は?candyくれる奴はみんな優しい奴だよ。」
「え?そんな単純な基準でいいの?」
「じゃあ逆に、杏実は何を基準にすんの?」