同棲生活·2
「どうしてそう思うの?」

「何となくだよ。オレも酒で現実逃避することあるから」

「…あたしも現実逃避したかったのかな」


瑠衣はオレに言うわけではなく、独り言のように呟いた。


「ストレス解消したかったのかもしれない」

「ストレス? もしかして樹里に無理難題な仕事をさせられてるとか?」

「そんなんじゃないよ。会社内でありもしない噂立てられててまいってるの」

「噂?」


その時、数日前のことを思い出した。

瑠衣と食堂に向かう途中、女性社員が瑠衣に視線を向けていたことを。


「『不倫してる』──って。変な噂は立てられて、挙げ句の果てに、『魔性の笹原』なんてあだ名までついて」

「そっか…」

「初めは気にしてなかったんだけど、本来いる部署の課長と不倫してることになってるから、そこにもいずらくなってね。そんな時、亮二のいる部署の応援の話を聞いて希望したの」

「辛い思いしてたんだな」


おそらく、他にもないことを言われているんだろうなと思った。
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