君だけの星へ
Star.1

"あやめ堂"にて



『人は運命を避けようとしてとった道で、しばしば運命に出会う。』


            ラ・フォンテーヌ



   ◇ ◇ ◇



【あやめ堂】は茶色いレンガ造りの外観がちょっとオシャレな、わたしのおじいちゃんが営む小さな古本屋だ。

店名の由来はもうすでに亡くなってしまったおばあちゃんの名前からで、お世辞にも流行っているとは言えないけど、それでもそれなりに顔馴染みの常連さんがいたりする。

昔から、わたしの大好きな場所。



「おじいちゃん!」



カラン、というベルのかわいらしい音をたてながら、ドアを押し開ける。

視界に映った見慣れた姿に声をかけると、その人物は顔を上げた。



「おお、世莉ちゃん。おかえり」

「ただいまー」



しわだらけの顔をもっとくしゃりとさせて笑うおじいちゃんに、わたしも同じように笑顔を返す。

そのままおじいちゃんのいるレジへ向かって足を進めていくと、おじいちゃんはパタリと手元の本を閉じた。
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