君だけの星へ
「……桐生さんって、普段勉強教えてくれるときはほんとに厳しいんです。なんていうか、毎時間が修羅場? 九死に一生? みたいな」

「あー……」



容易に想像できたのか、早瀬さんがどこか遠くを見ながらうなずく。

でも、と、わたしは言葉を続けた。



「でも、桐生さんは、やさしいところもあって……口では怒ってばっかりだけど、ちゃんと、わたしのことを認めてくれてて……」

「………」

「それで、いつのまにか、すきになってました」



ああ、恥ずかしい。こうやって改めてすきな人のことを話すのって、すっごく恥ずかしい。

しかも相手は、そのすきな人の友達だし!

わたしはおそらく真っ赤になったままうつむいて、顔をあげられない。



「……うん、そっか」



そんなわたしの目の前で、早瀬さんはそう言ってふわりと笑った。

その表情がまたなんだか恥ずかしくて、あげかけた顔をまた戻し、自分のひざに乗せた両手をひたすら見つめ続ける。

ちょうどそのときウェイターが来て、彼の前にコーヒーを置いていった。
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