君だけの星へ
「うれしいね。自分の友達を、そんなふうに想ってくれる人がいるっていうのは」



言いながら、早瀬さんがコーヒーを一口飲む。

ますます顔をあげられないわたしを気にすることもなく、彼は話し続けた。



「ほんとは俺、世莉ちゃんのこと名前だけは知ってたんだよ」

「え?」

「智の口から、女の子の名前が出るなんてすごく久しぶりだったからさ。だからどんな子なのか、気になってたんだ」



思いがけないその言葉に、わたしはただただ目をまるくする。

……桐生さんが、わたしの話を?



「内容は、こんな女の子の生徒を受け持ってる、って感じのことだったけど。それでも俺は、うれしかったな」



コーヒーカップを持ったまま、目を伏せてそう話す早瀬さん。

その雰囲気が、どことなく憂いを帯びていて。

思わずわたしが何かを発する前に、また彼が、悪戯っぽく口を開いた。



「いいこと教えてあげる。智は今、付き合ってる女の子とかいないよ」

「えっ」

「だから、そのへんに関しては遠慮する必要はなし」



にっこりと微笑む早瀬さんに、わたしは呆気にとられている。

……どうしてこの人は、わたしにこんなことを教えてくれるんだろう。
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