君だけの星へ
「ま、待ってください桐生さんっ」

「──おまえも、」

「へ?」



前を向いたまま歩き続ける桐生さんが呟いた言葉に、反応して声をあげる。

視線はちらりともこちらにくれないまま、彼は続けた。



「おまえも。あんな簡単に、男に連絡先ホイホイ渡すな」

「え、だって、桐生さんのお友達だし……」

「そんなん関係ねぇだろ。今日会ったばっかの人間なんだから、多少は警戒しろ」



少しキツいくらいのその言葉は、それでも、わたしの心にじんわりとあたたかく広がった。

だって桐生さんは、わたしのことを心配してこう言ってくれている。

少なくとも、彼と出会ってから今日までの間で、そんなわかりにくい彼の一部分は知っているつもりだ。



「……はい。ごめんなさい、桐生さん」

「あぁん? なに笑いながら謝ってんだよ?」

「ふふふ」

「……ムッカつく」

「あいたっ!」



急に振り返った桐生さんに不意打ちでデコピンされて、その痛さにおでこをおさえた。

うらめしげに彼を見れば、桐生さんはふ、と笑って、再び前に顔を向ける。
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