君だけの星へ
「ど、どうぞこちらです……」



ドアをおさえて桐生さんを中に促しながら、わたしはつい吐き出してしまいそうなため息をこらえていた。

な、なんで、こんなことに……?


パタンとドアを閉めて、桐生さんの後ろ姿を見る。

……やっぱ、後ろから見てもシュッとしててイケメンだ……。

桐生さんはぐるりとわたしの部屋を見回すと、小さく呟いた。



「……色気もクソもねぇ部屋……」

「………はい?」



あれ、空耳かな。

今なんだか、桐生さんの端正な顔からえげつない言葉が……。



「おい、何固まってんだよ」

「へっ?!」

「呆れるな。若い男部屋に入れてるくせに、その無頓着さ」



訝しげに眉を寄せ、こちらに視線を寄越す桐生さん。

まとっている雰囲気は、リビングでお母さんを交えて話していたときより、あやめ堂で会ったときと近いものになっていて。

……や、やっぱり、間違いなく同一人物……!
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