君だけの星へ
『……ごめん』



自分の気持ちを伝えたあのとき、桐生さんに、そう言われてから。

たくさん泣いて、そして決めた。

彼の全部と、向き合おうと。

彼を諦めるのは、それからでも遅くはないと。


カチャ、と小さな音をたてて、わたしはカップをソーサーに置いた。



「わたし、早瀬さんとここで初めて会った日に……桐生さんに告白して、そしてフラれました」

「……そっか」

「それで、知りたくなったんです。早瀬さんが、あの日言いかけてたこと」



彼は、『心が置き去りのまま』だと言った。

それはきっと、桐生さんが苦しげな表情でわたしの気持ちを拒絶したことと、少しは関係しているのかもしれない。

未練とか、納得がいかないとかじゃなくて。ただ単純に、知りたかった。



「……こうやって、勝手に人の過去を暴こうなんて、ズルいことだってわかってます」

「………」

「でも、わたしは、桐生さんのことがすき。それって、このズルいことの理由になると思うんです」



そんなのこじつけだって、馬鹿にされてもいい。

子どもの戯言だって、笑われてもいい。

だけど桐生さんをすきなわたしの気持ちに、嘘なんてない。

彼のことを知りたいと思う気持ちに、迷いなんてないんだ。
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