君だけの星へ
「だから智は、あのときから大切な人を作らない。星を見ることもやめなかったけど、だけどたまに……彼女との思い出だらけの星を見上げるのは、どこか苦しそうだった」

「………」

「……俺ね。智は趣味に留まらないで、もっと星の近くにいられる仕事に就くと思ってた。バイトの延長の家庭教師なんかじゃなくて、あいつなら、もっと他のものを目指せたのに」

「………」

「きっとそれが、あいつの限界だったんだね」



そう言って困ったように笑う早瀬さんに、ぎゅっと、ひざの上の両手を握りしめた。

そして数分ぶりに、わたしは口を開く。



「その、彼女さんの名前は……?」

「……『セイカ』だよ。『星』に、にんべんの『圭』で、『星佳』」

「星佳、さん……」

「自分の名前がきっかけで星を好きになったって、いつだったか言ってた」



きっと、星佳さんはすごく素敵な人だったんだ。

だって彼女の話をしている早瀬さんの、やさしい目を見ればわかる。

それに……桐生さんが、大切にしていた人なんだから。
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