君だけの星へ
「……早瀬さん、」

「ん?」



返事をして、カップを持ったままの彼がわたしと視線を合わせる。

なぜかそらしたくなる衝動を耐えて、言葉を続けた。



「今さらって、思うかもしれないけど……どうしてわたしに、教えてくれたんですか?」



だってわたしは、勝手に桐生さんのことを想っている、家庭教師上でのただの生徒だ。

きっと今までだって、桐生さんをすきになった人はいるはず。

それなのになんで、わたしにこんなことをしてくれるんだろう。


……もしかして。



「早瀬さん、もしかして桐生さんをすきになった女の人みんなに教えて……?」

「まさか」



即答して、彼は両手をあげて笑ってみせた。



「一応俺は、智の友達だよ。意味もなく、あいつの過去をベラベラしゃべったりしない」

「じゃあ、どうして……」

「世莉ちゃんなら、大丈夫だと思ったから」



きっぱりと、そうこたえた早瀬さん。

迷いのないその笑顔に、わたしは混乱する。
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