君だけの星へ
わたしは勇気を振り絞り、思いきって口を開く。



「……あの、ていうかさっきと態度違いすぎません……?」

「アレは保護者用。場合によっては生徒にも使うけど」



そう言って桐生さんは、どかりとわたしのベッドに腰かけた。

面倒くさそうな様子で、立ちつくしたままのわたしを見上げる。



「で、あんたの名前なんだっけ?」

「……望月 世莉……」

「もちづき せり、ね。……変わった名前」

「……!」



な、なんなのこの人……! なんか、いちいち言動が鼻につくんですけど!

なんとか怒りをおさえつけるわたしに、桐生さんは長い足を組んでさらに続けた。



「成績は、国語と社会以外苦手で……特に数学が破滅的なんだって?」

「う……」

「俺はその、破滅的な数学を教えるために呼ばれたから」



言いながらため息をついて両手を後ろにつっぱりつつ、再びわたしと視線を合わせる。



「ちなみに、前回の数学のテストの点数は?」



その問いかけに、ゔ、とわたしは言葉をつまらせた。



「……さ、さんじゅう、はち……」

「38点? ほんとにお粗末だな」

「すっ、すみませんねっ!!」



カッと頬を紅潮させて、わたしは声を荒げる。

なんかもう、この人に関しては“年上に対する礼儀”とか考えるのやめた!


するとおもしろくなさそうに後ろ頭をかいていた桐生さんが、不意にベッドから立ち上がった。

急にできた身長差に、わたしはたじろぎながらも負けじと目をそらさないで見上げる。
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