君だけの星へ
「──あ、世莉」

「うん?」



家に帰ってリビングに顔を出すと、キッチンにいたお母さんがエプロンで手を拭きながら近づいてきた。



「今日の理科お休みすること、言われてた通り、桐生さんに連絡しておいたけど……」

「……うん、ありがと」

「どうしたの? 体調でも悪いの?」



わたしが家庭教師を嫌がっていたのは、最初の頃だけ。

だからお母さんは、突然『今日は休みたい』と言ったわたしを心配しているんだろう。

キッチンに立ち、わたしは笑顔を作って、振り向いた。



「ごめんなさい。今日だけ、だから」

「……そう」



うなずいて、それ以上、お母さんは追及してこなかった。

それに心の中で、感謝しながら。

心配そうにわたしを見つめるその視線に気づかないフリをして、わたしはアップルティーの入ったマグカップを手に、自室へと向かった。
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