君だけの星へ
桐生さんが雨の日を嫌うのは、大切な人を失った日を思い出すから。



『行かないで、星佳』



あの雨の日、ベッドでうなされていた桐生さんは、きっとそう言っていたんだ。



『あの本は、一応人からの預かり物だから──』

『彼女が大切にしていた本でさえ、その手で破り捨てようとした』



わたし、最低だね。

ふたりの大切な思い出の本に、傷をつけてしまった。

こんなに素敵な物語に、わたしなんかが爪痕を残してしまった。

写真の裏の、もう届かないラブレターは、あまりにも切なくて。



「ッごめんなさい、ごめんなさい、桐生さん……っ」



それでも、わたしは。

あなたを想っていて、いいですか?
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