君だけの星へ
そして彼は、あっさりといとも簡単に言い放った。



「90点だ」

「……はい?」

「次のテストでは、90点台目指すから。そのつもりでやれよ」

「は?! ちょっ、そんなの絶対無理……!」

「うるさい。無理とか言うな」



自分を見すえる眼鏡越しの冷たい瞳に、わたしはまたぐっと息をつまらせた。

そんなわたしを満足げに見つめ、彼は腕を組む。



「それに──おまえには“貸し”もあるし」

「え?」



目をまるくするわたしの前で、桐生さんはベッドの上にあったものを拾い上げた。

それはひどく、見覚えのあるもので。



「そ、れ……」

「覚えてんだろ?」



今日、わたしがあやめ堂で彼に渡した──お店のロゴ入りの紙袋だ。

桐生さんは紙袋を開け、中にあった茶色いカバーの本を取り出す。

そうして今度は、それをパラパラとめくりだした。
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