君だけの星へ
催涙雨の記憶
『星が空で光っているのは、みんながいつか、自分の星を見つけて帰っているためなのかなぁ。』
サン・テグジュペリ
◇ ◇ ◇
雨のしずくが窓ガラスを叩く音で、目が覚めた。
ふとベッドから視線を向けると、少しだけ開いたカーテンの隙間から、どんよりとした灰色の空が見える。
「………」
俺は片腕を目元に乗せ、そのまま再びまぶたを閉じた。
──雨は、嫌いだ。じめじめと不快な湿気にまぎれた虚無感が、どうしてもつきまとうから。
言い様のない絶望に侵蝕されたあの日を、思い出すから。
『智』
目を閉じれば、いつでもよみがえる。
耳に心地良い、自分の名前を呼ぶ声や、笑顔。
「……星、佳……」
ゆっくりと、意識がフェードアウトしていく。
鳴り止まない雨音を聞きながら、俺はまた、まどろみの中に落ちていった。