君だけの星へ
「ねぇ智、私おもしろい本を見つけちゃった」

「なに? また星の本?」

「違うわ。恋愛小説よ」



彼女がそう言ってあの本を差し出したのは、高校を卒業してすぐのある日のことだ。

『Dear my Stargazer』という、タイトルからして彼女が惹かれそうな小説。

渡されたそれを一晩で読み終えて、次に顔を合わせたときに俺は、眉を寄せながらそれを返した。



「……嫌味か?」



そんな俺の表情にも、くすくすと星佳は楽しげに笑って。

その小説が映画になっていると知り、彼女がDVDを手にいれてからも、やはり俺たちはいつも一緒にそれを観た。



「──はぁ。やっぱりこれ、何回観ても飽きなくておもしろいなぁ」

「いや。俺はどっちかと言うと、目を輝かせて見てるおまえを見てる方がおもしろい」

「……もー……そうだ智、いつになったら最後の告白のシーン真似して言ってくれるの?」

「……今度な今度」

「え~?」



すべてが愛しくて、しあわせで、満ち足りた日々だった。

──だから、このやさしい日々が、突然消えてしまう日が来るなんて。

そんなこと、この頃の俺は夢にも思わなかったんだ。
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