君だけの星へ
テキストを指しながらメンデルの説明をしていた桐生さんが、ふとこちらに顔を向けた。



「……おい。なに人の顔ジロジロ見てんだ」

「いやー桐生さんって、どうして顔はこんなに綺麗なのかなって思いまして」

「『顔は』ってなんだ。『顔は』って」

「いひゃひゃひゃひゃひゃ!」



久しぶりのほっぺた引っぱり攻撃に、わたしは両手をジタバタさせて抵抗する。

彼はパッと手を放し、呆れたようにため息をついた。



「あのな、ちったぁ別のとこ意識しろよ。俺一応、おまえに『ごめん』って言ってんだぞ」

「ひ、ひどい桐生さん……わたしは精一杯、強がって……うぅ……っ」

「……あー、違う。別に、泣かせようと思って言ったんじゃなくて……」



そこでわたしは、けろりとした表情でうつむかせていた顔をあげる。



「なーんて、桐生さん引っかかりました?」

「………」

「いひゃいいひゃい! ごめんなひゃい!」
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