君だけの星へ
「家に上がらせてもらって、おまえの母さんがお茶を用意してくれている間さ。手持ち無沙汰だったもんで、なんとなくこうやって眺めてたわけ」

「………」

「んで、気づいてびっくり。本の中のある1ページが、見事に裂けてるもんだから」



ドクン、ドクンと、心臓が大きく鳴る。

目の前に広げられているのは、ページの1枚が縦に大きく破れた本の見開き。

わたしはぐっと、両手のこぶしを握りしめた。



「俺さ、見ちゃったんだよね。本の修理を頼んでいた古本屋の店番をしてた制服姿の女の子が、客に返すはずの本を読んでて、しかもそれを床に落としてるところ」

「……!」



桐生さんの言葉に、思わずうつむいていた顔をあげてしまう。

気づかれて、た……?!



「──こういう言葉知ってるか?」



言いながら、桐生さんは開いていた本を閉じる。

そして右手に持った本で、トントン、と自分の肩を叩いた。
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