君だけの星へ
「……は?」



ピリ、と、彼のまとう空気が変わったような気がした。

わたしは逃げ腰になりそうな自分を叱咤して、まっすぐに桐生さんを見上げる。



「今、星佳って……」

「……はい」

「……知って、たのか……?」



彼の言葉に、もう1度、わたしはうなずいた。

それを確認した桐生さんは、ぐっと、身体のわきにある自分の両手に力をこめて。

そう、と、冷たく呟く。



「……京一か?」

「………」

「あいつ、勝手に……」

「ッ、違うんです! わたしが、訊いたの……っ!」



押し黙ったわたしを見て肯定だと思ったのか、桐生さんは空をにらんだ。

その眼差しに思わず、わたしは声を荒げて弁解する。



「は……?」



わたしの言葉を聞き、桐生さんは眉を寄せてこちらを流し見た。

それから、ハッと鼻を鳴らして嘲笑する。



「……だったら、なに? 同情でもした?」

「ッ、」

「かわいそうって? 不幸だって? そんな言葉、聞き飽きたからもういらない」



声には怒りが含まれているのに、そう吐き捨てる彼の表情は、悲しみで溢れていて。

わたしはまたこぶしを握りしめ、首を何度も横に振った。
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