君だけの星へ
……ねぇ、ズルいよ星佳さん。

だって桐生さんは、今もあなただけを見つめてる。

あなたという、たったひとつの星を探してる。


わたしは手を伸ばし、目の前の桐生さんの腰元に、ぎゅっと抱きついた。

彼が、一瞬息を飲む。



「、もちづ……、」

「……わたしは、ずっとここにいます」



頭上で、桐生さんが瞠目するのがわかった。

それに構うことなく、彼の胸に顔をうずめたまま続ける。



「わたしは、ここにいます」

「………」

「ここに、います……っ」



ねぇ、桐生さんの身体は、こんなにあったかいよ。

きっと星佳さんだって、何度もこの体温に救われた。

だから、泣かないで。彼女との日々を、悲しいものにしないで。

桐生さんは、ひとりなんかじゃないから。



「……望月……」



決して抱きしめ返されることのない腕に、力を込めながら。

せめて今、“孤独”だけは感じないでと、祈ってた。
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