君だけの星へ
メランコリックガール
『常識とは人が18歳までに集めた偏見のコレクションである。』
アルベルト・アインシュタイン
◇ ◇ ◇
物語の中みたいな恋に、憧れていた。
ベタな恋愛小説みたいに、ドキドキして、少し切なくって、だけどハッピーエンドな恋。
「あぁん? てめぇそこさっきも言ったところだろうが。おまえの耳は飾りか? これはただの作り物ですか?」
「………」
偉大な小説家様方。今わたしは、甘い恋からもっとも遠いところにいます。
「……桐生さん、あのですね。ちょっとわたし、そろそろ休憩したいなぁ、なんて……」
「は? なに? どの口が言ってんの?」
「しゅしゅしゅしゅみまひぇん……!」
かなり下手からの控えめな申し出にも、桐生さんは思いっきり眉を寄せてわたしの頬をぐいぐいつまんだ。
わたしはつねられた右頬をおさえながら、気づかれないようにキッと桐生さんをにらみ上げる。
なんて暴君! 絶対Sだこの人……!
「言っとくけど、この俺にガン飛ばそうなんざ100万年早いからな」
「う!?」
涼しげな表情でテキストを眺めつつ言われたせりふに、ギクリと肩を震わせる。
次いで「はい、次は19ページの問5から~」とせっつかれ、わたしはまたしぶしぶシャーペンを握りしめたのだった。