君だけの星へ
「約束、って……おじいちゃんが外でそのお客さんと会うんじゃないの?!」

「違うよ。ここに、そのお客様が訪ねてくるんだ」

「ええっ?! じゃあなんで、おじいちゃんは出かけるの?!」

「そのお客様との約束だからだよ。僕は、この場にいない約束なんだ」



言うが早いか、おじいちゃんは「よろしくね」と言い残し、店を出ていってしまった。

残されたわたしは呆然と、閉まったドアを見つめる。



「えぇ……?」



ひとりきりになった店内に、わたしの困惑した声がさみしく響く。

わたしはため息をついて、再びカウンターにつっぷした。

おじいちゃんはいつも物腰がやわらかくてやさしいけれど、たまによくわからなくて不思議だ。

ちらりと店内の掛け時計を見ると、午後4時少し前。

こうなってしまったら仕方ないと、もう1度だけ深く息を吐いて上体を起こす。
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