君だけの星へ
時計の針が12を示して、ボーン、ボーンと低い音が、午後4時を知らせる。


──カラン


そのときちょうど出入口のベルが鳴って、わたしは顔をあげた。



「いらっしゃいま……」



だけどお決まりの挨拶は、そこで途切れてしまって。

ドアを見つめて瞠目したわたしは、代わりに「なんで、」と小さく呟いた。



「……望月」

「き、りゅうさ……」



ゆっくりと、彼がこちらへと近づいてくる。

それと比例するように、わたしの鼓動はどんどん速くなって。


どうして、桐生さんが、ここに──?



「……店長さんには、俺が連絡したんだ。今日の午後4時、俺とおまえを、ふたりきりで会わせてくれって」

「………」

「何か訊かれるかと思ったけど、なんにも言わないで了承してくれて、助かった」



そう言って桐生さんは、どこか困ったように笑う。

久しぶりに見るその表情に、きゅうっと無意識に胸がしめつけられた。
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