君だけの星へ
ああ、桐生さんが、笑ってる。

笑みを浮かべて、今わたしの目の前に立っている。


だんだんと頭がその事実を理解してきて、目頭が熱くなってきた。

ぐっと下唇を噛んで、涙を堪える。



「わ、わたし、は……何も、してませ……」

「いや、違うよ」



そう言って桐生さんは、またこちらに近づいてきた。

そして椅子に座るわたしの手をとって立ちあがらせ、カウンターを抜けて自分の目の前に立たせる。

あたたかい彼の体温が、手のひらから伝わる。



「おまえはまわりが見えなくなるくらい星に夢中になる俺を、認めてくれた」

「………」

「俺の趣味に付き合わせたのに、それでも笑って、楽しんでくれた」

「………」

「それだけで十分、救われたんだ」



だから、ありがとう。

頭上から降ってくる声に、わたしはうつむいたまま、また首を横に振った。


違う、違うよ。

わたしはお礼を言ってもらえることなんて、ひとつもできてない。

ただ、自分がうれしかっただけだった。

結局は、あなたを困らせてしまうことになってしまったのに。
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