君だけの星へ
「……だけどあの日、泣きながら俺に『やさしくするな』って言うおまえを見た瞬間……そんな考え、全部吹っ飛んだ」

「……ッ、」

「無意識におまえを傷つけていた自分に愕然として、それと同時に、ただおまえを大切にしたい、手にいれたいって、強く思った」



言いながら、彼の手がわたしの頬を包む。

切なく細められた瞳が、まっすぐにわたしを射抜いた。



「……忘れるとか、忘れないとか。許すとか、許さないとか。代わりとか、代わりじゃないとか。そんなの全部、どうでもよくなったんだ」



後から後から溢れてくる涙は、渇くことを知らない。

ただ今は、彼の言葉だけがわたしのすべて。



「わ、わたし、はっ、」

「………」

「わたしは子どもで、限度を知らない馬鹿だから……っ星佳さんを想っている桐生さんごと、わたしが桐生さんを想います……っ」

「……うん、ありがとう」



呟いて、また桐生さんはわたしの首筋に顔をうずめる。

かかる吐息がくすぐったくて身をよじるけど、それすらもおさえるように、強く身体を抱きしめられた。

そして今度はわたしから、口を開く。



「じゃあ……どうして、わたしを抱いてくれたんですか? それっきりで、離れてしまうつもりだったからじゃないんですか?」

「……聞きたい? 最低な理由だけど」



低い声音にわたしがうなずくと、桐生さんは抱きしめる力を少しだけ緩めて、わたしを見下ろした。



「1回抱いておけば、俺のことを簡単に忘れないと思ったから」
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