君だけの星へ
「俺は、ズルい大人だよ。1度距離を置かなければと思っても、ただ離れるだけじゃ足りなかった。つなぎ止めておく、枷が欲しかった」

「………」

「その結果が、あの最低な行為だ。……幻滅した?」



そう言って、少しだけ不安げに首をかしげる。

そんな彼に、再びぎゅっと抱きついた。



「……ううん。うれしかった」



ただそれだけを言うと、桐生さんは耳元でまた「ありがとう」と小さく呟く。

そしてわたしの前髪を軽くすき、おでこにキスをした。

驚いて顔をあげると、彼はとてもやさしい笑みを浮かべてわたしを見下ろしていて。



「……すきだよ、世莉」



そしてわたしがその言葉に反応する前に、唇を塞がれた。

息継ぎの仕方がわからない大人のキスに、力が抜けてしまう。

ようやく唇が離れた後、真っ赤な顔で呆然とするわたしを見て、彼はぷっと吹き出した。



「ふは、真っ赤だ」

「……!」
< 171 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop