君だけの星へ
──拝啓、彼が大好きだった人へ


あなたのいるそこは、どんなところですか

そこから桐生さんは、よく見えていますか



「まるでりんごだな、その顔」

「う、うるさいです!」

「ふはは」



桐生さんは笑っています

となりにいるのがわたしでも、笑ってくれています

だから、安心してください

安心して、桐生さんを見守っていてください



「……今さらですけど桐生さんって、そうとう性格悪いですよね」

「ほんと今さらだな」

「……むかー!」



あなたから彼を奪ったわたしは、許さなくていいから

わたしのことは、嫌いになってもいいから


ただ、彼のことだけは

あなたとの日々から1歩踏み出した、彼のことだけは

自分を裏切っただなんて、責めたりしないでください

『しあわせになって』と、背中を押してあげてください
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