君だけの星へ
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「……ねぇ智さん、ほんとにこの方向で合ってるの?」
「さあ?」
「『さあ』って……!」
目的地は見当たらず、まわりはまったく知らない道。
わたしは無意識に自分のおなかを撫でながら、運転席の彼に抗議する。
「ま、なんとかなるだろ」
それでも彼は相変わらずの態度で、そんなことを言いつつハンドルを握っていて。
そうして適当な駐車場に車を停めると、わたしの左手をとってさっさと歩き出した。
「……それにしても俺のガキって……あの夜か? いややっぱあの日か? あー、そういや式の夜も激しかったしなァ……心当たり多すぎてわかんねぇな」
「………」
「なんだその軽蔑した眼差しは」
昼間っから堂々と教育上よろしくないことを呟く彼に、無言で冷ややかな視線を向ける。
それからわたしはため息をつくと、つないだ手に少しだけ力をこめた。
「……ごめんね」
「ん?」
「わたしが、早瀬さんの奥さんと同じ病院がいいって言ったから……」
家の近くにも、産婦人科の入っている病院はある。
だけどわたしがそうやってわがままを言ったから、いい大人ふたりが迷子だなんて、情けない事態になってしまった。
そう思って顔をうつむかせていると、となりの智さんは小さく笑って。
ポン、と頭に、その大きくてあたたかい手を乗せてくれた。
「世莉と、こんなふうに迷いながら歩くのも、悪くないよ」
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「……ねぇ智さん、ほんとにこの方向で合ってるの?」
「さあ?」
「『さあ』って……!」
目的地は見当たらず、まわりはまったく知らない道。
わたしは無意識に自分のおなかを撫でながら、運転席の彼に抗議する。
「ま、なんとかなるだろ」
それでも彼は相変わらずの態度で、そんなことを言いつつハンドルを握っていて。
そうして適当な駐車場に車を停めると、わたしの左手をとってさっさと歩き出した。
「……それにしても俺のガキって……あの夜か? いややっぱあの日か? あー、そういや式の夜も激しかったしなァ……心当たり多すぎてわかんねぇな」
「………」
「なんだその軽蔑した眼差しは」
昼間っから堂々と教育上よろしくないことを呟く彼に、無言で冷ややかな視線を向ける。
それからわたしはため息をつくと、つないだ手に少しだけ力をこめた。
「……ごめんね」
「ん?」
「わたしが、早瀬さんの奥さんと同じ病院がいいって言ったから……」
家の近くにも、産婦人科の入っている病院はある。
だけどわたしがそうやってわがままを言ったから、いい大人ふたりが迷子だなんて、情けない事態になってしまった。
そう思って顔をうつむかせていると、となりの智さんは小さく笑って。
ポン、と頭に、その大きくてあたたかい手を乗せてくれた。
「世莉と、こんなふうに迷いながら歩くのも、悪くないよ」