君だけの星へ
それからまた、スパルタでサディスティックな数学の授業は再開して。

だけども開始から5分、すぐに桐生さんの怒号が飛んだ。



「だから、ここはさっきも教えた公式で……!」

「うう……っ」

「おまえわざとか? わざとなのか? あえて笑いをとろうとしてんのか? だとしたらやめろ、全然おもしろくないから」

「ううう……っ」



わ、わたしだって、自分なりに一生懸命やってるのに!

一方的であんまりな言いぐさに、わたしはとうとう、反抗心剥き出しの顔で桐生さんをキッと見上げた。



「なんなんですかもうっ、桐生さんのお馬鹿!」

「え、おまえが言う?」



すかさずつっこんできた桐生さんをまたひとにらみして、わたしは続ける。



「変ですよ桐生さん! 普通家庭教師の先生っていうのは、教え子に対してもっとやさしく接するものだと思います!」

「あぁん? それはおまえの“常識”だろうが。常識っつーのはな、人が18歳までに集めた偏見のコレクションなんだよ。つまり、おまえにはまだ1年分コレクションの猶予があるわけだ。そこに俺流の新しい常識を詰めこめ」

「なんてむちゃくちゃな……!」
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