君だけの星へ
「そういえば、さっき棚橋さんからまた紅茶の葉をもらったんだよ。飲むかい?」

「ほんと?! 飲む飲む!」



紅茶が大好きなわたしは、その言葉を聞いて即座に声をあげた。

常連の棚橋さんは紅茶好きのわたしを知っていて、よくあやめ堂におすそ分けをしてくれる明るい性格のおばさんだ。

うきうきした気分で、かばんをレジの横に置く。



「棚橋さんが持ってきてくれる紅茶、いつもすごくおいしいんだよね~」

「世莉ちゃんがそうやって笑ってくれるから、棚橋さんもあげがいがあるんだろうねえ」



言いながらおじいちゃんは席を立って、紅茶を淹れるためかレジの奥の自宅の方へと消えていった。

つい今までおじいちゃんが座っていた木製の椅子に、今度はわたしが腰をおろす。



「……はあ~、落ちつくなぁ~……」



狭くるしく並べられた本棚。

紙とインクと少し埃っぽいにおい。

壁に掛けられた時計の秒針が進む音。


カウンターにぺたりとうつぶせて、深く息を吐く。

──変わらないここは、昔からずっと、わたしの宝物だ。
< 2 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop