君だけの星へ
Star.2

アンチ漫画的展開



『人間の心は、一定の音階を持った楽器に似ている。その音階の両端を超えれば、音は無限なのだ。』


            ジョン・チンダル



   ◇ ◇ ◇



「ねー、世莉って家庭教師に来てもらってるんだよねぇ?」

「へ?」



ガヤガヤと騒がしい、昼休み中の教室。

同じクラスの友達である有紗からの唐突な質問に、わたしは思わず間の抜けた声をもらした。

それから片手にポッキーを持ったまま、こくりとうなずく。



「うん、そうだよ」

「だよね。それってさ、どんな感じ? 男? 女?」

「……男の先生だけど」



わたしのその返答に、有紗の目が明らかに輝いた。

なんとなく彼女の考えていることがわかったわたしは、ポッキーをかじりながら内心ため息をつく。


……つまり彼女は、期待しているのだ。

マンガの中にあるような、家庭教師と生徒とのちょっと危ない恋の話を。



「マジで!! 何歳? かっこいい? 眼鏡かけてる?」

「……たしか歳は25歳。顔は、……すんごく屈辱だし認めたくないけどかっこいい。眼鏡はカテキョ中だけかけてる」



というか、なんで眼鏡?

バッカね世莉、カテキョはインテリ系眼鏡男子って相場が決まってんのよー。

……ふーん。
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