君だけの星へ
「ああそうだ世莉ちゃん、ちょっと店番頼まれてくれるかな?」

「うん?」



ティーカップを両手で包むように持ち、こくんと紅茶を一口飲みこみながら、わたしはおじいちゃんの声に視線を上げる。

ああ、やっぱり棚橋さんの持ってきてくれる紅茶はおいしいなあ、なんて至福に浸りつつ、続きの言葉を待った。



「少し用があってね、これから2時間くらい出掛けなきゃならないんだけど……僕がいない間に、きっと訪ねてくるはずのお客様がいるんだ」

「へー、本の予約をしてた人なの?」

「いや、ここ何年か、毎年この時期になると来てくださる方でね。本の虫干しや補修を頼んでいかれるんだよ」

「え?」



予想していたものとは違う答えが返ってきて、わたしは目を瞬かせてカップをカウンターの上に置く。
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