君だけの星へ
「………」

「………」

「………」

「……なに?」



わたしの解いた問題の採点をしていた手を止めて、桐生さんが訝しげに眉を寄せた。

やっぱり気づかれてたか、と思いながら、「なんでもないです」と顔を背ける。



「うーわムカつく。この俺のイケメンフェイスに見とれてたくせに」

「……そういうこと言うから評価下がるのに」

「あぁん?」

「な、なんでもないでーす!」



物騒な声と眼差しから逃れるように、わざとらしく数学の参考書などを片付ける。

ベ、別にさ、昼間の有紗の言葉を気にしてるわけじゃないけど。

なんとなく、なんて曖昧な理由で、桐生さんの顔を意味なく見つめてしまったりしているわけで。


……けど、ほんとに桐生さんって、わたしのこと“論外”みたいに扱うよなぁ。

それって、一応年頃の女としてどうなんだろうか。
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