君だけの星へ
「確かに、小学生向けでもわたしはあの本好きです。なんか、頭の中に物語の中の光景が思い浮かびやすくて」

「ああ、情景描写がうまかったな」

「ですよね。特に、流れ星が現れるシーンが……」



と、そこまで言ってわたしは、あることを思い出す。



「そうだ桐生さん、今日は流星群の日なんですよ!」

「は?」



急に話題を変えたからか、彼は一瞬目をまるくしてこちらを見た。

それに構うことなく、わたしは得意げに続ける。



「流星群ですよ、今日学校で聞いたんです! えーっと、たしかナントカ流星群が……」



……あれ? せっかく先生に教えてもらったのに、肝心の流星群の名前を思い出せない。

なんだっけ、なんかちょっと人の名前みたいな……。


押し黙って悩み始めたわたしを、しばらく見ていた桐生さん。

だけどそのうち呆れた様子で、思いっきりため息を吐いた。



「……それ、もしかしてみずがめ座エータ流星群のこと?」

「あ、それです! えーっと、ナントカ彗星がナントカだと考えられてるって!」

「……ハレー彗星が母天体な。ちなみに母天体っつーのは、流星群を生みだす流星物質を放出している天体のこと」



わたしの言葉につっこみを入れ、「やっぱり馬鹿だなおまえ」とシメのひとこと。

そんな彼に対し多少の殺意を覚えながらも、わたしはきょとんと目を瞬かせた。
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