君だけの星へ
「……桐生さん、ずいぶん詳しいんですね」



名前だけならまだしも、ハレー彗星のくだりまで知っているなんて。

あ、もしかして、ニュースで特集してたのかな。

そう考えながら訊ねたわたしから視線を外し、彼は若干歯切れ悪くこたえる。



「あー、まあ……大学時代に、そういう分野を勉強してたから」

「そういう分野って、天体系ですか?」

「まぁな。実際に、サークルのメンバーで天体観測に行ったり」

「へぇー。桐生さん、星が好きなんですか?」



わたしの何気ない問いかけに、マルやチェックをつけていた桐生さんの手の動きがぴたりと止まった。

それから彼は、採点し終えた問題集を閉じた後。

目を伏せて、どこか切なく笑った。



「……ああ、好きだよ」

「──ッ、」



その、まるで何か大切なものを思い出しているかのような、やわらかい声音は。

なぜか不意に、わたしの鼓動をはやくさせた。
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