君だけの星へ
300円でトキメキを
『今日あなたに降りかかるかもしれない災難の大半は、勇気をもってあたれば、たいていそれに見合うか、それ以上の恩恵をもたらしてくれます。』
オグ・マンディーノ
◇ ◇ ◇
「ま、最初の授業はこんなもんか」
「………」
家庭教師の桐生さんに教えてもらう教科が、ひとつ増えました。
その名も理科。数学ほどではないけど、こちらも同じく苦手なものだ。
……どうやらうちの母親は、このイケメン青年をそうとう気に入ったらしい。
「それじゃあ、今日はここまで。次回までにちゃんと復習して──」
「あ、あのっ!」
「あ?」
彼の言葉をさえぎったわたしに、桐生さんは怪訝な視線を向けてきた。
そんなふうに目で促されながらも、わたしはまた、一瞬悩んで。
だけどもようやく覚悟を決め、先ほどからずっと言おうと思っていたことを、思いきって口にした。
「あ、あのですねー……実はわたし今日、理科の授業中思いっきり居眠りをしてしまいまして」
「………」
「そして見事それを発見した先生に、ペナルティとしてプリントを渡されまして……」
「………」
ああ、無言の圧力が痛い。
そしてわたしは、頭の中で考えていたせりふを一気にまくしたてた。