君だけの星へ
「虫干し……ってアレだよね、本を虫とか湿気から守るために、陰干しすることだっけ?」



たしか湿気の少ない晴れた日に、今まで何度か、おじいちゃんがやっているのを見たことがある。

わたしの言葉に、おじいちゃんは「正解」と言いながらうなずいた。



「ちょっと変わったお客様でね、毎回同じ本を置いていくんだよ。よっぽど、その本を大事にしているんだろうねえ」

「へー……それじゃあその人が来たら、預かってた本を渡せばいいのね?」

「ああ。返す本は、ここに置いておくから」



おじいちゃんが示した『ここ』は、カウンターの左端。

そこにはたしかに、B5サイズの茶色い紙袋があるのを確認する。



「おっけー。まかせて!」



笑ってみせたわたしによろしくね、と言い残し、おじいちゃんは外へと出掛けていった。

その後ろ姿を見送ってから、わたしはあることに気づく。



「……あ、そのお客さんの特徴、聞くの忘れてた……」



ま、いっかな。きっと来ればすぐわかるだろうし。

そう勝手に自己完結してかばんから自前の本を取り出すと、わたしはいつものようにのんびりカウンターで読み始めた。
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