君だけの星へ
そうこうしているうちに、いつのまにか足音は確実に近づいてきていて。



「ひ……!」



気づいたわたしが走り出すより先に、後ろからガシリと肩を掴まれた。

その瞬間、一気に頭の中が真っ白になる。



「ッ、やぁっ」

「おいっ!!」



だけど次に聞こえた声に、わたしはバッと顔をあげた。

そして思わず、目をまるくする。



「え、きりゅう、さん……?」



わたしの左肩を掴んで振り向かせたのは、怒ったような表情で少しだけ息を切らした桐生さんだった。

それがわかったとたん一気に安堵が押し寄せ、つい涙腺が緩みそうになったけど──。



「おまえ、アホか!!」



そのままの勢いでいきなりそう怒鳴られて、流れそうになってた涙も引っ込んだ。



「え、」

「バカ、夜道なんだから、ケータイぐらい持って出かけろ!」

「はい……?」



ふと視線を下げると、わたしを引きとめていない方の彼の手には、なぜかわたしのケータイが握られていた。

あれ、忘れたことにも気づいてなかったや……。
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