君だけの星へ
ふたりでアイスを食べ、そしてわたしの課題も無事に終わらせることができて、桐生さんは帰り支度を始めた。

ちょうどお母さんはお風呂に入っているらしく、わたしひとりが玄関でお見送りする。



「遅くなってしまってすみません……本当に、ありがとうございました」

「んな何回も言わなくてもわかったっつの。つーか俺はおまえの家庭教師なんだから、帰りが多少遅くなったって勉強を教えてやるのは当然だろ」



だからもう気にするな、と言外に言われている気がして、わたしは素直にこくりとうなずいた。

それを見た彼は、満足げに笑う。



「じゃあな。また2日後」

「はい。おやすみなさい」

「ああ」



そうしてドアノブに手をかけた桐生さんが、玄関を出る直前。

ああ、と思い出したように、こちらを振り返った。



「そうだ望月。おまえ、絶対自分のベッドの下見るなよ」

「へ?」



目を瞬かせたわたしに対し、彼はニヤリと口角をつり上げる。

それから、桐生さんはこうのたまった。
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