君だけの星へ
「だから、ここは……」

「……あの、桐生さん」



ついに耐えきれなくなって、わたしは桐生さんの説明をさえぎり口を開いた。

こちらを見下ろす彼の瞳を、まっすぐに見上げる。



「やっぱり、ダメですよ。桐生さん、さっきよりずっと具合悪そうだし」

「………」



わたしの言葉に眉を寄せて押し黙る彼は、玄関で会ったときよりだいぶ顔色もひどくなっていた。

いくらポーカーフェイスを装ったって、明らかに体調が悪そうな彼に気づかないほど、わたしは鈍感じゃない。



「今日は、何ページまで進む予定でした?」

「……88ページ」

「わかりました。わたしちゃんと、自分でそこまで終わらせますから。だから桐生さんは少し休んでから、今日はお家に帰ってください」



こんな状態で勉強を続けていたって、桐生さんの具合は悪くなるだけだ。

そう思って、わたしはいつもよりも少しだけきっぱりした口調で話す。

桐生さんはそんなわたしに反論せず、くしゃりと自分の前髪を掴んで「悪い」とひとことだけ呟いた。

素直なその様子が、そうとう彼の身体が辛いことをうかがわせる。
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