君だけの星へ
「わたしのベッド、使っていいですから。少し良くなるまで、横になっててください」

「……ああ……」



桐生さんは眼鏡を外し、緩慢な動作でベッドへと横になった。

わたしも椅子をおりて、彼に掛け布団をかけてやる。

すると桐生さんが、辛そうなカオながら皮肉っぽく少しだけ口角をあげてみせた。



「は……まさかおまえに、布団をかけてもらう日が来るとは……」

「……今はそんなこと気にしないでください」

「……悪い……30分経ったら、起こして……」

「わかりました」



わたしの返事を確認し、桐生さんは目を閉じる。

その苦しそうに歪んだ表情を見つめ、はー、と深く、桐生さんが息を吐き出したのを聞いたわたしは。

彼に約束したことを実行すべく、再び机へと向かった。
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