君だけの星へ
「……望月?」

「は、はい」

「………」



両肩を掴まれたまま正面からまじまじと見つめられて、思わずどもりながらこたえる。

ベッドの上で見つめ合っているわたしたちは、端から見たらどんなふうに映るんだろう。

桐生さんは今の状況を理解できていないのか、しばらくぼんやりとわたしを眺めていたけど……すぐにパッと、肩に置いていた手を放した。



「わり、俺、寝ぼけてた」

「そ、そのようですね」

「ほんと、悪かった。俺、帰るから」



言いながら、うなだれるようにひたいへとあてていた右手をどけて、彼はベッドからおりた。

そして手早く自分の荷物をまとめ、最後に眼鏡をかける。

そのままドアへと向かった背中を慌てて追ったけど、片手で制されてしまった。



「見送らなくていいから。おまえは、勉強の続きしてろ」

「で、でも」

「いいから」



強い口調でそう言われ、わたしは素直に「わかりました」と返答する。

それを見てうなずいた桐生さんは、部屋から出る間際、さらにこう話した。



「いいか、今日あったことは忘れろ」

「え、」

「じゃあな」



彼の言葉を最後に、パタンと、目の前でドアが閉まる。

そのとたん気が抜けて、わたしはへにゃりと床に座りこんだ。


……絶対、今のわたしの顔は、真っ赤で。



「……忘れられるわけ、ないじゃん……」



だってこんなにも、心臓の音が速くうるさいのに。
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