君だけの星へ
「よし、このへんで一旦休憩するか」

「お、お疲れさまっす……」



や、やっと一休みできる……。

自分の腕時計を見ながら話した桐生さんに対し、わたしはぱたりと力なく机に伏せた。

そんなわたしを一瞥し、それから彼は、ふっと視線をずらす。



「……悪いな」

「へ?」



聞こえた呟きに、思わず身体を起こした。

見上げた彼は、やはり少し気まずそうな様子で首の後ろに右手をまわしている。



「俺昔から、宇宙とか天体に関することになると熱くなって……だから、」



その言葉の続きを、桐生さんは言わなかった。

ただそっぽを向いたまま、がしがしと頭をかいている。



「………」



……だけど、なんとなくわかってしまった。

だって、桐生さんは……星が、好きなんですよね。



「……ねぇ、桐生さん」

「あ?」

「わたしは、紅茶が大好きだけど……紅茶のことが、そんなに詳しいわけではないんです」



紅茶が好き。それはほんとのこと。

だけど、専門的な知識や技術なんて、全然持ってない。

……だから。
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