君だけの星へ
「だから──そういうの、いいと思います」



言いながら微笑んで、わたしは桐生さんを見上げた。


熱くなるのも、他の人に厳しくあたっちゃうのも、星が大好きだから。

大好きで、大切なものだから。

それってすっごく、素敵なことだと思うんです。


わたしを見下ろしている桐生さんは、驚いたように目を瞠っていて。

だけども不意に、ふっと表情を緩ませた。



「……望月って……」



その続きを言う前に、くしゃりと髪を撫でられる。

自分とは全然違う大きな手に、ドキ、と思わず心臓がはねてしまったのは、内緒の話。

結局、後に続く言葉は聞けずじまいで。



「……ふふふ」

「なに笑ってんだコラ」

「ぎゃ! あああ頭をわし掴まないで……!」

「ははは」

「に゙ゃー!」



だけどいつもより、人間らしい表情を見せてくれた桐生さんがうれしかったから。

わたしはあえて、気にしていないフリをしたんだ。
< 54 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop