君だけの星へ
「どれ? 有紗が当たりそうなのって」

「これ。問4」

「……ああ、この問題はね、」



そう言ってわたしは、前のページなどにある公式を指さしながら、解き方の説明を始めた。

決して、自分が完全に答えを導き出してしまわないよう。だけどもその結論にいたる過程を、わかりやすく伝えるため、ときどき教科書にシャーペンで書き込んでいく。

でも、その説明の途中……目の前にいる有紗が唖然とした表情で自分を見つめていることに気づき、思わず口をつぐんだ。



「……なに?」

「いや、……世莉が数学教えてくれるなんて、天変地異に近いなあって」

「な、し、失礼なっ!」



彼女のひどい言い様に、つい顔を赤くしながら反論した。

対する有紗は頬杖をついて、「だってさぁ」と言葉を続ける。



「世莉って超文系で、いっつも数学は赤点かギリギリじゃん。学年末は何点だったっけ? 35点?」

「さっ、38点ですぅ!!」



ついつい大きな声を出してしまい、だけどそれがまったく大声を出して否定するにあたらない点数だと気づいて、また口を閉じた。

そんなわたしの様子を、有紗は生あたたかい眼差しでうかがっている。
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