君だけの星へ
どうやらこの本の内容は、フィクションのラブストーリーものみたいだ。

ヒロインの女性には、昔から想いを寄せる幼なじみがいる。

だけどその幼なじみは、色恋事よりも星や宇宙が大好きで……天体観測や研究に夢中になっている彼に、いつもヒロインはやきもきしているらしい。


つい読み耽りそうになり、次のページをめくろうとしたそのとき。



プルルルルルッ!


「ひゃっ!?」



突然鳴り出した電話の音に驚いたわたしは、思わず持っていた本を床に落としてしまった。

慌ててそれを拾い上げ、電話を受ける。



「ありがとうございます、あやめ堂でございます。……はい、いつもお世話になってます。……すみません、店長は今外出中でして……はい、よろしくお願いします。失礼致します」



そう言って、受話器を持っているのとは逆の手で電話を切った。

受話器も元あった位置に戻し、ふぅと息を吐く。


や、やば……お客さんにお渡しするもの落としちゃったよ……!

状態を確かめようと再びその本を手に取ったわたしは、だけども今度はお店の出入口のベルの音が耳に届き──びくりと身体を縮こませる。
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