君だけの星へ
「ただいまーっ」

「おかえりー、世莉」



靴を脱ぎながら玄関で家の中に声をかけると、リビングの方からお母さんの声が返ってきた。

かばんを持ったまま、わたしはリビングへと向かう。



「お母さん」

「世莉、今日は帰りが早いのね」

「……だって今日は、桐生さんの数学が4時半からなんだもん」



どさりとソファーに腰をおろし、唇をとがらせてそう話した。

乾いた洗濯物にアイロンをかけていたお母さんは、それを聞いて「あらあら」と苦笑する。



「相変わらず、数学は苦手なままなのね」

「ん、んー……どうだろ。今はそんなに、苦手ってわけではないかなあ」

「そうなの?」



アイロンがけの終わった服をたたみつつ、お母さんが顔をあげてこちらを見た。

その視線から逃れるように、天井を見つめながら深くソファーに沈む。
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